患者さんとともに歳を重ねる
-私が大切にしていること-
薬局という場で紡ぐ、人生と信頼の物語
私が薬剤師として日々心に留めているのは、「患者さんとともにとしをとる」という想いです。この言葉には、単に薬を渡すだけでなく、患者さんの人生の歩みに寄り添い、共に時間を積み重ねていくという強い願いが込められています。薬局は、子どもからお年寄りまで、さまざまな世代、さまざまな背景を持つ方々が訪れる場所。私たち薬剤師は、そのひとりひとりの人生の節目や日常に静かに関わることができる、特別な立場にあります。
薬局は人生の交差点
薬局には、産まれたばかりの赤ちゃんを連れたご家族や、初めての風邪で不安げな学生、骨折やケガで来局される方、さらには生活習慣病やうつ病、悪性新生物などの慢性疾患を抱え、何年にもわたり毎月顔を合わせる患者さんまで、本当に多くの人が訪れます。それぞれの方にとって、薬局に足を運ぶ理由も、抱える思いも千差万別です。時には、安堵や希望、時には不安や戸惑いを抱えて薬局のカウンターに立つ方もいます。
私が大切にしているのは、どんな患者さんも「ここに来てよかった」と、心から感じていただけるような時間と空間を提供することです。薬局は単なる薬の受け渡しの場所ではなく、人生の交差点。一人ひとりの人生に触れ、その瞬間の想いを受け止める場所でありたいと考えています。
安心して笑顔で帰ってもらえるために
私がこの仕事を続ける中で、患者さんが安心して笑顔で帰る姿ほど嬉しいものはありません。子どもが怖がりながらも薬を手に取り、お母さんと笑い合う姿。長年通ってくださる高齢の方が「また来月もよろしくね」と微笑んでくれる瞬間。そのひとつひとつが、私にとってかけがえのない宝物です。
そのために心がけているのは、丁寧な説明と、温かいコミュニケーションです。薬の効果や副作用、飲み方だけでなく、生活上の悩みや些細な気がかりにも耳を傾けることで、患者さんの不安や疑問を少しでも和らげたいと考えています。
信頼という絆を築く
患者さんと月日を重ねるうちに、自然と信頼関係が芽生えてきます。最初は緊張した面持ちだった方が、徐々に悩みを打ち明けてくださるようになったり、健康や生活について前向きな会話が増えたり。その度に、「この人の力になれている」と実感します。
信頼は、一朝一夕に築けるものではありません。日々の小さな対話や、相手の気持ちに寄り添う姿勢の積み重ねが、やがて揺るぎない絆となります。それは、医療の現場において何よりも大切な資産です。
患者さんの「これから」に寄り添う
薬局を訪れる方の多くは、人生の何らかの転機や試練の中にいます。ときには、病気や怪我をきっかけに不安や孤独を抱えたり、慢性的な症状に悩まされたりすることもあるでしょう。そんな時こそ、私たち薬剤師は「薬を渡す人」で終わることなく、患者さんの「これから」に希望や安心を届ける存在でありたいと願っています。
薬局の未来を見据えて
医療が進歩し、ライフスタイルが多様化する中で、薬局の役割も変化しています。従来の「薬をもらう場所」から、「健康を支えるパートナー」への転換が求められています。健康相談や予防医療の拠点として、地域に根ざした薬局が果たす役割は今後ますます重要になるでしょう。
「ともにとしをとる」ことの意味
「患者さんとともにとしをとる」という言葉は、単に年齢を重ねることだけを指しているのではありません。患者さんの苦楽や変化、人生の節目をともに受け止め、時には支え、時には励まし合いながら歩んでいくこと。そこには、命の重みや人と人のつながりの尊さが凝縮されています。
日々の営みの中で、患者さんの笑顔や感謝の言葉に支えられ、私は今日も薬局のカウンターに立っています。これからも「患者さんとともにとしをとる」ことを何よりも大切に、温かい心で地域医療に貢献していきたいと思います。
代表取締役 浅田 浩史